レビュー『ネットワークはなぜつながるのか』第2版

ネットでいい評判を昔から聞いていた印象があったので、今回読みました。

ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識

ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識

対象読者層

IT系のお仕事等に関わり始めて、しばらくした人がいいと思います。

他の人のレビューには、

各章の最初に「ウォーミングアップ」と称したクイズが載っていることである。本屋で立ち読みをしてみて、このクイズの問題を「ところどころ間違う」程度であれば、あなたはこの本をレジに持って行くべきである。もし、半分くらい間違えるようであれば迷うところだろう。問題の意味さえ分からないようなら、少なくとも今は読まないほうが良い。

とありますが、私も同意です。

構成

「ブラウザからWebサーバーにリクエストを送り、Webサーバーがレスポンスを返すまで」をツアーに見立てて全六章で説明しています。

それに伴い、構成は大きく二つないし三つに分かれると思います。

  1. クライアント・サーバーについて(第1,2,6章)
  2. ルーター・スイッチ・回線・プロバイダ等について(第3,4章)
  3. ファイアウォール等について(第5章)

普段はソフトウェアエンジニアをしている私についていうと、1,3番目は知識がありましたが、2番目はほぼ全く分からないというレベルでした。

6章の説明は1,2章の理解を前提としていますが、だいたい忘れているのでいい復習になります。

教科書然っぽいところ、そうでないところ

教科書を読んでいる感覚に近いです。文字がたくさんあります。ただ、詳細な図も十分にあるので理解に困ることはありません。

各フェーズによって、パケットがどのような姿をしているかを中心に学ぶことができます。

最後に数ページで要約した図表もあるのでうまく整理できます。

面白いのは、OSI参照モデルの話が出てこないことにあります。

ネットワークを勉強するとたいてい最初に登場しますが、特に必要ではないんだなということに気づかされました。*1

このように教科書のような側面をもつ本書ですが、異なる点もあります。

例えば、横方向へつなげることを意識している点がそうです。

「横方向へつなげる」というのはどういうことか、高校の科目「世界史」を例に挙げて説明します。

世界史には『ヨコから見る世界史』という有名な参考書があります。

ヨコから見る世界史 パワーアップ版 (大学受験プライムゼミブックス)

ヨコから見る世界史 パワーアップ版 (大学受験プライムゼミブックス)

普通の世界史の教科書では、「中世ヨーロッパの動き」のように、ある地域に絞って説明がなされます。一方この参考書は、特定の時代、例えば17世紀の世界はどのようになっているか?という切り口で説明がされています。

読者はこれによって、新たな世界史の見方を獲得し、世界史という莫大な蓄積のある分野について、理解を深めることができます。

『ネットワークはなぜつながるのか』も同様で、少しひねった、しかし重要なテーマに沿った説明によって、読者のネットワークについての知識を深めることに成功していると思います。

まとめ

本書はネットワークに関しての知見を、「ブラウザからWebサーバーにリクエストを送り、Webサーバーがレスポンスを返すまでの流れ」というテーマにそって体系化したものです。

一気通貫の知識のつながりを確認・補強する用途で使えると思います。

分量がかなり多いですが、読んだ記憶が残っているうちに通読するのが理想でしょう。

もちろん、各フェーズの確認には逐次使えます。私も1,2,5,6章は折をみて読み返したいなと思いました。

ほかの人の感想

昔の本なので、探せばたくさんあると思いきや、意外とありませんでした。

『ネットワークはなぜつながるのか』戸根勤(書評): trivialities & realities

*1:逆に、本書を読んだ後にモデルを見た場合は、しっくりきそう