『アジャイルサムライ』はアジャイルの第1歩
『アジャイルサムライ』を読了したのでレビューを書きます。
入門書としての3つの特色
アジャイルサムライは特に入門書と知っていて読んだわけではないのですが、アジャイル関連の入門書籍としてぴったりな理由が3つあります。
- 過不足ない分量
- カジュアルな語り口
- 「マスター・センセイと熱心な弟子」という謎のコーナーがある
- たくさんのわかりやすい図
ちなみに私が一番好きなのは荒ぶる四天王*1の図です。
毎週価値を届けよ
海外の書籍にありがちなのは、同じ主張を何度も繰り返すということです。『アジャイルサムライ』も例に漏れず、あることの重要性を繰り返しています。
それは、見出しに挙げたとおり、「毎週お客さんに価値を届けること」です。
実際、やろうとしたら大変
上記「毎週お客さんに価値を届ける」にはいくつか必要なことがありますが、特に私の印象に残ったのは、「成果責任を果たす」ことです。具体的には以下のことをやる必要があると述べられています。
- 君は、仕事の質に責任を持たなきゃならない。
- 君は、スケジュールを守らなきゃならない。
- 君は、お客さんの期待をマネジメントしなきゃならない。
- 君は、身銭を切るかのような覚悟でお客さんの資金を扱わなきゃならない。
文章にすると当たり前なような気がしますが、実際やろうとすると結構な覚悟が要りそうな印象があります。
『カイゼン・ジャーニー』を読んだときも思ったのですが、読み物としては楽しくても、実際にやろうとなるとめちゃくちゃ大変だ……という感想を持ちました。
疑問……お客さんはだれ?
本書は非常に読みやすいですが、わからなかったところもあります。
例えば、本書では、建設会社で使うシステムの例が多く使われていました。この場合は、誰がお客さんかわかりやすいと思います。
一方、パッケージ製品など、お客さんがたくさんいる場合、本書でいう開発に参加する「お客さん」は誰なのか、ちょっとよくわかりませんでした。おそらく、それを売っていくであろう事業部なのだろうなとは思いましたが。
アプリケーション開発への参加を促すべき「お客さん」が誰かは、もう少し掘り下げられていても良かったなと思いました。*2
まとめ
現在私はアプリケーションの開発に従事していますが、その進め方を客観的に見つめ直す上で、本書は非常に役立ちました。
2011年に日本語訳の初版が発売されましたが、あまり古さを感じませんでした。
プロジェクトにより状況は様々でしょうが、どんな人でも面白く読めると思います。
最後に目次を挙げて終わりとします。
目次
- 日本の読者の皆さんへ
- 謝辞
- お目にかかれて光栄です
- 第I部「アジャイル」入門
- 第II部 アジャイルな方向づけ
- 第3章 みんなをバスに乗せる
- 第4章 全体像を捉える
- 第5章 具現化させる
- 第III部 アジャイルな計画づくり
- 第6章 ユーザーストーリーを集める
- 第7章 見積り:当てずっぽうの奥義
- 第8章 アジャイルな計画づくり:現実と向きあう
- 第IV部 アジャイルなプロジェクト運営
- 第V部 アジャイルなプログラミング
- 第12章 ユニットテスト:動くことがわかる
- 第13章 リファクタリング:技術的負債の返済
- 第14章 テスト駆動開発
- 第15章 継続的インテグレーション:リリースに備える
- 第VI部 付録
- 付録A アジャイルソフトウェア開発の原則
- 付録B オンラインリソース
- 付録C 参考資料
- 監訳者あとがき
- 索引
- 著者・監訳者・訳者について
※目次は以下のサイトを参照しました。